抗がん剤治療のやめどき(前編)―医学・医療というよりは、生き方の問題 |藤沢市のかつや心療内科クリニックは医師によるがん患者さんのこころを専門にした心療内科です

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抗がん剤治療のやめどき(前編)―医学・医療というよりは、生き方の問題

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抗がん剤治療のやめどき(前編)―医学・医療というよりは、生き方の問題2023.12.01

 抗がん剤治療は、いつまで続ければよいのでしょうか。どのタイミングでやめるのでしょうか。がんの患者さんにとっては、非常に難しくて悩ましい問題と思います。今回は、抗がん剤治療のやめどきにまつわるこころのことに焦点を当てて、『抗がん剤治療のやめどき―医学・医療というよりは、生き方の問題』と題して、藤沢市にあるかつや心療内科クリニックからがん相談コラムをお届けします。

 なお、本コラムは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん等々、臓器に塊を作るがんについて書きました。抗がん剤治療で治る可能性がある急性白血病や悪性リンパ腫などの血液のがんは、本コラムの対象外ですのでご注意ください。また、塊を作るがんなのですが、睾丸のがんと子宮絨毛がんも本コラムの対象外です。

がん医療における私の診療経験

 このテーマについて書く前に、がん医療における私の診療経験についてお話します。私は、精神科医として、緩和ケア医として、以下に記す二つの場で働いていました。

・大学病院やがん診療連携拠点病院:手術、抗がん剤治療や放射線治療などを受けておられる患者さんの治療が円滑に進むことを目指して、身体症状を緩和し、穏やかに過ごすためのこころのケア
・ホスピス・緩和ケア病棟:がんの積極的治療を終わられた患者さんの痛みなどの身体症状を緩和し、穏やかに過ごすためのこころのケア

 この二つの場で、たいへん多くのがんの患者さんを診させて頂きました。これらの経験と医学・医療の知識に基づいて、以下の文章を記します。

亡くなる間際まで抗がん剤治療

 抗がん剤治療により、身もこころもボロボロになっている患者さんが多いことに、私は本当に驚きました。総合病院では、抗がん剤治療中に亡くなる患者さんがおられます。また、緩和ケア病棟に入院して、数日で亡くなる患者さんは少なくないです。緩和ケア病棟入院の直前まで、抗がん剤治療を受けられているのです。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

 抗がん剤治療が終ってしまえば、後は死を待つだけ、と思われている患者さんは多いです。できる治療があるならば、どこまでも治療を受けたいというお気持ちは本当によくわかります。しかし、一方で、こんなことなら、抗がん剤治療を早くやめておけばよかった、と後悔されている患者さんが少なくないことも確かです。

抗がん剤の医学・医療的事実①-進行がんを治すことはできない

 ここで、抗がん剤の医学・医療的事実を二つ書かせて頂きます。第一に、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん等々、臓器に塊を作るがんについて、手術ができないくらい大きくなった場合、再発した場合、遠隔転移した場合、抗がん剤で治すことはできません。この事実は、専門家の間での共通認識であり、このことを否定する医師はいないと思います。

抗がん剤の医学・医療的事実②-副作用が激烈

 第二に、抗がん剤の副作用は激烈です。抗がん剤は、がん細胞だけではなく、正常な細胞も破壊してしまいますので、激烈な副作用が出現するのです。この事実を否定する医師はいないと思います。

 反論として、最近は副作用対策が進んでいて、副作用が少なくなったと言う医師もいると思います。副作用対策は、若干、進んだという印象はあります。しかし、副作用対策の薬による副作用も大きな問題なのです。

 そうは言っても、副作用で苦しんでいる患者さんは極めて多いですし、抗がん剤治療により、正常な細胞が破壊されてしまうという事実は何も変わりません。むしろ、副作用対策を行いながら、抗がん剤治療を続けてしまい、いきなり、回復不可能な副作用(毒性)が出てしまう可能性が高まっていると考えます。

抗がん剤治療のやめどき―あなたの生き方を大切にすることを最優先に

 抗がん剤の医学・医療的事実を二つ挙げました。抗がん剤治療のやめどきを考える際には、これらの事実を前提にする必要があります。

 当クリニックのがん相談コラム『がん治療と情報―がんを抱えながら【今】を生きる』に、「あなたはどのように生きたいのか、何を大切にし、何を目標に生きているのか、によって治療の内容と療養の形が決まってくる」と書きました。

 あなたの生き方とがん治療の内容は表裏一体です。あなたの生き方を大切にすることを最優先に、抗がん剤治療のやめどきを考えて頂きたいのです。抗がん剤治療を続けることにより、身もこころも苦しみながら大切な時間が過ぎていき、気がついてみたら、最期の時が迫っていた、という患者さんにたくさんお会いしました。

抗がん剤治療のやめどきの基準

 一応、医師の間で共有されている抗がん剤治療のやめどきの基準はあるにはあります。しかし、抗がん剤治療を続けるのかやめるのかは、医師によって判断は非常に異なりますし、患者さんと主治医の関係によっても異なってくると思います。

抗がん剤治療の判断基準としてのパフォーマンスステータス(PS)

 例えば、基準として用いられている指標として、PSがあります。患者さんの体力を推定する指標の一つで、日常生活の制限の程度を示します。5項目に分類されます。

・0:全く問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行うことができる。
・1:肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座って行う作業(軽い家事、事務作業)ができる。
・2:歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべてできるが、作業はできない。日中の50%以上はベッドの外で過ごす。
・3:自分の身のまわりの限られたことだけができる。日中の50%以上をベッドまたは椅子で過ごす。
・4:全く動けない。自分の身のまわりのことは全くできない。完全にベッドまたは椅子で過ごす。

抗がん剤治療は、体力が低下しても続くことが多い

 抗がん剤治療が推奨されるのは、PSが0~2の患者さんです。しかし、PSが3や4の患者さんにも抗がん剤治療がしばしば行われています。

 抗がん剤治療は体力勝負です。自分の身のまわりのことができなくなる時期というのは、体力の低下が著しく、抗がん剤治療の効果が期待できない時期でもあります。抗がん剤治療により、体重が著しく減少した患者さんも多いです。体調が悪い状態で治療を受けますと、悲惨としか言いようがないことになってしまう可能性があります。

抗がん剤治療の中止を言い出せない医師

 医師は、患者さんに対して、抗がん剤治療をやめましょう、とは言いにくいのです。患者さんに死の宣告をするようで中止とは言えないのだと思います。

 抗がん剤治療を中止するかどうかを、患者さんに正しい情報を提供しながら、きちんと話し合うためには、多くの時間が必要です。医師は忙しいので、そんな時間を割くくらいなら、抗がん剤治療を続けてしまおう、と思ってしまう傾向にあると思います。そのような医師ばかりではないのですが、残念ながら、このような傾向は確かに存在します。

抗がん剤治療を続けるのか、やめるのかを判断するのは、あなた自身

 上述したような現状を踏まえて、抗がん剤治療を継続するのか、やめるのかは誰が決めるのかを考えてみましょう。決めるのは誰でしょうか? 主治医、家族、・・違います。あなた自身です。「自己決定」という言葉を噛み締めてみて下さい。周りの意見を聞きすぎてしまい、自分で決めることができず、後悔している患者さんを時折、見かけます。

 それでは、自己決定するためには、どのようなことをしたらよいのでしょうか。それは、あなたが、あなたの主治医と、抗がん剤治療について、しっかりと話すことです。

抗がん剤治療について、主治医としっかりと話す

 皆さんと主治医の関係はいかがですか。今一つ、話が通じないなあ、と思われている方もおられるのではないでしょうか。当クリニックのがん相談コラム『がん治療と情報―がんを抱えながら【今】を生きる』にも書かせて頂きましたが、抗がん剤治療の基盤は、あなたと主治医との良い関係を維持することにあります。抗がん剤治療について、主治医に何でも相談できるとすごく安心ですよね。

 そのためには、主治医とのコミュニケーションの工夫が必要なのです。個人差がありますので、ここでは多くを述べることはしませんが、あなたが主婦だったら、主治医に、例えば、「私は、家族においしい食事を作ってあげたいのです。ですから、家事ができなくなるような治療を受けたくないのです。そのような治療はありますか」のように具体的に質問してみるのです。ここから、あなたの生き方を大切にする治療が始まるのです。

まとめ:抗がん剤治療のやめどきー医学・医療というよりは、生き方の問題|藤沢駅徒歩5分 かつや心療内科クリニック(医師によるがん相談)

 抗がん剤治療のやめどきは、医学・医療というよりは、生き方の問題ということを、ご理解いただけましたか。上述しました、二つの抗がん剤の医学・医療的事実について、皆さんなりに資料を集めて、勉強することをおすすめします。これらの知識が皆さんの血となり肉になることを願っています。

 当クリニックでは、下記のような困りごとの相談をお受けいたします。
■抗がん剤治療のやめどきについて迷われている方
■主治医とのコミュニケーションがうまくいかず、困っておられる方

 皆さんの御出でをお待ちしています。2024年1月には、がん相談コラム『抗がん剤治療のやめどき(後編)』をお届けします。

概要 概要

院長 吉田勝也
標榜科 がん心療内科
資格 日本緩和医療学会 
緩和医療認定医
厚生労働省 精神保健指定医
日本医師会認定 産業医
住所 神奈川県藤沢市南藤沢17-14
ユニバーサル南藤沢タワー403
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