がん治療と情報―がんを抱えながらも【今】を生きる
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がん治療と情報―がんを抱えながらも【今】を生きる2023.03.01
過去を振り返り、未来を想像して不安や恐れの中に陥り、時には絶望感さえ抱いてしまう、過去や未来に囚われて【今】を生きることが難しくなっている、そのような状態にあるがんの患者さんも少なくないと思います。今回は、『かつや心療内科クリニック』から『がん治療と情報―がんを抱えながら【今】を生きる』と題して、コラムをお届けします。
がんを抱えて【今】を生きることは難しい
不安や恐れの中にあると、スマートフォン、パソコンやテレビなどから情報を得たいという気持ちになると思います。しかし、ちょっと待って下さい。得られた情報が、自分が置かれた状況に合っていなくて私たちを不安にさせるだけ、ということはしばしばあります。内容に信頼性がないものもたいへん多いです。
このような情報は、患者さんの過去や未来に対する辛い思いを刺激し、皆さんが不安や恐れの中に沈んでしまうということが起こります。大切なのは、難しいことかもしれませんが、過去や未来に囚われるのではなく、【今】に集中して生きることだと思います。今、身体が何かひとつのことをしている時に、意識がどこか遠く(過去や未来)に行ってしまっている時間が多いというのは寂しくて残念なことと思います。自分が今に存在していないという状況で、大事な時間が過ぎていくからです。
とはいっても、がんを抱えながら、今に集中することは至難の業と思います。作家の山本文緒さんは、膵臓がんで亡くなられましたが、闘病中の苦悩を著書『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』(新潮社)に綴っています。引用します。「何も考えたくない。過去のことも未来のことにも目を向けず、昨日今日明日くらいのことしか考えなければだいぶ楽になれるのにと思いつつ、気が付くと過去の楽しかったことや、それを失う未来のことで頭の中がいっぱいになって苦しくなっている。」わかる、わかる、と頷いている方もおられると思います。
主治医があなたの重要な情報を持っている
このような中にあって大切なことは何だと思われますか。1月下旬のことですが、食道がんの治療を受けられている女優の秋野暢子さんがインタビューを受けている番組を見ました。食道がんと診断され、主治医から喉頭摘出を含む手術を勧められたそうです。しかし、秋野さんは女優として声を失うことは耐えられないと思い、主治医に手術は受けたくない、別の治療法はないか、と問うたそうです。そうすると主治医は、化学放射線療法を進めてくれたとのことでした。
このように、がん治療の内容を決定するとき、その人の職業や生き方や体力や生活状況などなど、多くの要因が絡みます。あなたの病状や状況をよく知っている主治医とあなたが話し合って、治療内容が決められます。何を申し上げたいかというと、あなたが【今】、最も必要としている情報は、主治医が持っているということです。よって、がん治療において、主治医とのよい関係を維持することが、【今】に集中することに繋がってくると思うのです。何でも主治医に相談できる、というのは安心感をもたらしてくれると思います。
主治医に何でも相談できる関係を作る
主治医に何でも相談できる関係を作るためにどうしたらよいのでしょうか。これは、皆さんと主治医との相性もありますから一概には言えないのですが、基本的なこととして、主治医を受診するときは、質問や疑問点を箇条書きにして持参するとよいでしょう。ポイントを外さないで主治医とやり取りすることができます。主治医の説明で重要と思ったことは、メモを取ることも大事です。ご自分にとって有用な本や文献を主治医に紹介してもらうのも手です。患者さん思いの医師であれば、これらのことに喜んで応じてくれると思います。よい関係を作るためには、いろいろな工夫が必要と思いますので、皆さんなりの方法を試みてみませんか。
がん相談支援センターに相談してみる
付け加えますが、がん診療連携拠点病院に指定されている病院には、がん相談支援センター(名称は別のこともあります)があります。がんについて詳しい看護師や生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどがスタッフとして在籍しています。がん診療連携拠点病院にかかっている患者さんの場合、がん相談支援センターのスタッフは主治医と連携しながら相談に乗ってくれますので、皆さんが置かれた状況に合った情報が得られると思います。
お勧めーあなたの生き方に合わせて情報をコントロールする
がん治療の内容を決定するとき、その人の職業や生き方や体力や生活状況などなど、多くの要因が絡むことは上述した通りです。つまり、あなたはどのように生きたいのか、何を大切にし、何を目標に生きているのか、によって治療の内容と療養生活の形が決まってくるということです。がん治療は、あなたの生や死に直接かかわりますので、あなたが何に対して生きる意味を見出しているか、ということが大きな比重を占めると思います。
【今】を生きるために、情報に振り回されるのではなく、あなたの生き方に合わせて情報をコントロールするというイメージを思い浮かべてみてはいかがでしょうか。主治医や病院、そして、情報と上手に付き合って頂きたいと思います。
院長 | 吉田勝也 |
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標榜科 | がん心療内科 |
資格 | 日本緩和医療学会 緩和医療認定医 厚生労働省 精神保健指定医 日本医師会認定 産業医 |
住所 | 神奈川県藤沢市南藤沢17-14 ユニバーサル南藤沢タワー403 |
申込用 メール アドレス |
gan-soudan@kzc.biglobe.ne.jp
電話番号は載せておりません 未掲載の理由はこちら |
連携医療機関 | 湘南藤沢徳洲会病院 藤沢市民病院 |
金曜日 | 13:00〜17:00(各50分〜4枠) |
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土曜日 | 10:00〜15:00(各50分〜4枠) |
金曜日と土曜日が祝日と重なる場合は休診
1回50分という十分な時間をお取りして、心理療法的枠組みの中で、じっくりと相談して頂ける体制を整えています。
その体制を維持するために、すべて自費診療とさせて頂いています。健康保険は使えませんのでご留意ください。