がん患者さんに特有の不眠-原因と治療
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がん患者さんに特有の不眠-原因と治療2025.10.27
がん患者さんに特有の不眠というものがあります。がん患者さんの身体的、心理的症状に起因するもの、それから、がん治療の影響による不眠がこれに当たります。
そこで、今回は、『がん患者さんに特有の不眠-原因と治療』と題して、藤沢市にあるかつや心療内科クリニックから、がん相談コラムをお届けします。がんの治療を受けておられる患者さんやご家族にとっては重要な知識ですので、是非、最後までお読み下さい。
なお、当クリニックでは、がん患者さんとご家族の不眠の治療も行っています。
不眠のタイプ
がん患者さんの30~50%が、不眠を経験すると言われています。がん患者さんの不眠の発生率は高いのです。不眠は、以下のようにタイプ分けされます。
■入眠障害:なかなか寝付けない
■中途覚醒:夜中に目が覚める
■早朝覚醒:朝早く目が覚めてしまう
■熟眠障害:ある程度眠れたにも関わらず、眠れたという感じがしない
がん患者さんに特有の不眠の原因
■がんの症状:痛み、呼吸苦、嘔吐や倦怠感など、がんの辛い症状が睡眠を妨げます。これらの症状に対しては、緩和医療が有効です。痛みの治療に関しては、当クリニックのがん相談コラム『がん疼痛治療とこころのケア』をお読み下さい。
■がん治療:がんの治療に使われる様々な薬が不眠の原因になることがあります。例えば、利尿剤、飲まれているがんの患者さんは少なくないですが、この利尿剤が不眠の原因になることがあります。利尿剤を夕食後や寝る前に飲むと、尿意で中途覚醒が生じることがあります。よって、服薬のタイミングを午前中に変更するといった工夫が必要です。心当たりのある方は、ご自分で判断せず、主治医にご相談下さい。
■抗がん剤治療:抗がん剤治療中に不眠が生じることが多いです。様々な要因が考えられますが、薬剤の視点では、抗がん剤治療にステロイドを併用すると、不眠がたいへん生じやすくなります。
■がん関連疲労(cancer related fatigue):がん関連疲労は、がんそのものやがん治療(抗がん剤、放射線、手術など)によって生じます。復職にも大きな影響を与え、患者さんにとってたいへん辛い症状です。不眠を伴うこともあります。このことについては、がん相談コラム『がん治療と仕事の両立・・復職のリアル』をお読み下さい。
■がん患者さんに特有のストレス:がんの患者さんには、当ホームページの『診療内容特徴』欄のイラストにあるような辛さが、常に付きまといます。
一般的な不眠の原因
■睡眠を妨げる環境:入退院や療養場所の変更による環境の変化など
■睡眠を妨げる疾患:レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)、睡眠時無呼吸症候群など
■精神医学的要因:せん妄、うつ病など
不眠の治療
不眠の治療には、薬による治療と薬を使わない治療があります。治療の定石として、まずは、薬を使わない治療を行い、それでうまくいかなければ、薬による治療を行います。
当クリニックでは、処方は行いませんので、薬を使わない治療を専らとしています。薬を使わなくてもできることはたくさんあるのです。最近では、薬を使わない治療を希望される患者さんが増えてきましたが、当院は、そのような患者さんに相応しいと思います。
なお、精神疾患に伴う不眠は、薬物療法が必須ですので、当クリニックでは対応できないことを申し添えます。
以下、薬を使わない治療について述べます。
生活習慣療法
不眠の原因となっている生活習慣を見直す治療です。このことだけで眠れるようになる患者さんは少なくないです。
■起床時間と就寝時間を規則正しくする
■昼寝は、できるだけしない方がいいです
■午後のカフェインは、控えめに
■日中に、規則的に適度な運動をする
■寝酒は、睡眠の質を悪化させますので、やめた方がよいです。お酒で眠れているよ、と言われる方もおられますが、慢性的なアルコール摂取は、中途覚醒が増え、アルコール依存症のリスクも高まります。
等々
心理療法的枠組みでの治療
この治療は、私の得意分野です。当ホームページの『医師紹介』欄にも書かせて頂きましたが、自治医科大学付属病院での研修が終ったころ、心理療法の指導を受けるために、心理療法家であり精神科医でもある山中康裕先生(現在、京都大学名誉教授)に教えを請いました。2年間、ご指導を頂きました。「この2年間、薬を使わないで患者さんを守るとはどういうことかを知って下さい」これは、山中先生に最初に言われた言葉です。
時々、申し上げていることですが、あなたの話が聴かれるだけで、少し前進できる日があります。今は、ピンとこないかもしれませんが、あなたにこのような経験をして頂きたいのです。
サプリメント
■不眠に効くと言われているサプリメントは、たくさんあります。その中で、私が、当クリニックの患者さんにおすすめしているサプリメントがあります。天然の成分で、作用メカニズムも従来の睡眠薬とは全く異なります。学術的にも不眠に効果があることがわかっています。薬を使わないで治療してほしいという患者さんに打って付けです。効き目には、個人差があるとはいえ、患者さんには概ね好評です。久しく眠れなかったが、よく眠れて、朝はすっきり、と喜んでいる患者さんがおられます。
■睡眠薬とサプリメントの違い:睡眠薬は、無理やり眠らせますが、サプリメントは、自然な睡眠を助けます。
■大事なことですが、サプリメントは、不眠治療の補助に過ぎません。生活習慣が乱れた状態で、サプリメントを飲んでも効果は期待できません。
■ここで、ご注意申し上げたいことがあります。サプリメントの中には、健康を害するものがあります。サプリメントは、患者さんによって、向き不向きがあります。サプリメントに関しては、当クリニックが、当院受診の患者さんに対して、医学的根拠に基づいて、情報提供させて頂いています。よって、サプリメントをお試しになる時は、必ず、主治医に相談して下さい。当クリニックが、読者の皆さんに、サプリメントをおすすめしているわけでは決してありません。
自宅でできるちょっとした工夫
人により、好みが違いますので、あなたに合ったものを見つけて下さい。例えば、以下のようなものがあります。
■ぬるめのお風呂や足湯
■アロマ:寝る前に、お好みの香りを楽しんで下さい。
■好きな音楽を聞いたり、本を読む
■寝室の照明は、自分が心地よいと感じる明るさや暗さに調節。好みの寝具を選ぶことも大事です。
■寝る前に、スマホを見ない。ブルーライトにより脳が覚醒し、SNSにより脳が興奮します。交感神経の働きが活発になって、眠れなくなります。最近、スマホによる不眠がたいへん多いです。
■自律訓練法:自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを調節します。夜間は、副交感神経の働きが活発になると眠りやすくなります。専門家の指導を受けた後は自宅でできるようになります。患者さんによって、向き不向きがありますので、必ず、主治医に相談して下さい。
等々
まとめ:
がん患者さんに特有の不眠-原因と治療|かつや心療内科クリニック(医師によるがんのよろず相談)
■がん患者さんの不眠の頻度は高いです。そして、がん患者さんに特有の不眠があります。よって、がん治療を熟知した緩和ケア医や心療内科医の受診をおすすめします。
■当クリニックは、がん患者さんやご家族の不眠の治療を行っています。当クリニックでは、お薬を使いませんが、上記のように、できることは、本当にたくさんあります。ご来院をお待ちしています。
■なお、精神疾患に伴う不眠は、薬物療法が必須ですので、当クリニックでは対応できないことを申し添えます。

| 院長 | 吉田勝也 |
|---|---|
| 標榜科 | がん心療内科 |
| 資格 | 元日本緩和医療学会 緩和医療認定医 厚生労働省 精神保健指定医 日本医師会認定 産業医 |
| 住所 | 神奈川県藤沢市南藤沢17-14 ユニバーサル南藤沢タワー403 |
| 申込用 メール アドレス |
gan-soudan@kzc.biglobe.ne.jp
電話番号は載せておりません 未掲載の理由はこちら |
| 連携医療機関 | 湘南藤沢徳洲会病院 藤沢市民病院 |
| 金曜日 | 13:00〜17:00(各50分〜4枠) |
|---|---|
| 土曜日 | 10:00〜15:00(各50分〜4枠) |
金曜日と土曜日が祝日と重なる場合は休診
1回50分という十分な時間をお取りして、心理療法的枠組みの中で、じっくりと相談して頂ける体制を整えています。
その体制を維持するために、すべて自費診療とさせて頂いています。健康保険は使えませんのでご留意ください。