がん治療と仕事の両立・・復職のリアル
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がん治療と仕事の両立・・復職のリアル2023.09.01
休職して、がんの手術などの治療を受けて、復職できるまでの期間は、がんの種類や治療の内容などによってたいへん大きく異なります。また、復職や就労の継続に大きく影響を与える要因として『がん関連疲労(cancer related fatigue)』が挙げられます。今回は、『がん治療と仕事の両立・・復職のリアル』と題して、コラムをお届けします。がん関連疲労のお話をしながら、がん治療後の復職について具体的にみていきたいと思います。
がん関連疲労(cancer related fatigue)をご存知ですか?
がん関連疲労とは、がんそのものやがんの治療(抗がん剤治療、放射線治療や手術など)によって生じるもので、患者さんは、エネルギーが枯渇した感じ、何かをやろうとする気持ちがおきない、疲れ切っている、などと言われます。通常の疲労は、休息や睡眠により回復しやすいのですが、がん関連疲労は、休息や睡眠ではなかなか改善せず、長期にわたって続く慢性的なものであるため、心身ともに消耗したり、身体機能が著しく低下することがあります。それぞれの患者さんの病状や治療の内容などによって、がん関連疲労の症状の軽重や持続期間に大きな個人差があります。
日本においては、がん関連疲労に関する文献は少ないです。よって、海外の病院のホームページなどに詳しく記載されていることがありますので、関心のある方は検索してみて下さい。
周囲からは理解してもらえない
会社でも「集中できないんです」「とにかくしんどいです」などと言われる方は少なくないですが、このような症状により、復職ができなかったり、就労の継続が難しかったりということがあります。がん関連疲労は、日本ではあまり知られていませんし、目には見えない症状ですので、周囲から理解してもらえず、辛い思いをしている方もおられます。
フルタイムでの復職までに約半年、時短勤務では約2.5カ月
がん患者さんの復職に関して、たいへん興味深い研究があります。産業医経験が豊富で、順天堂大学医学部公衆衛生学の遠藤源樹准教授の著書(文献)から引用します。この研究の対象者は、12年間のフォローアップ期間中に、初めてがんと診断され、病休となった大企業の社員1,278名です。休職開始から、フルタイムでの復職までに平均201日(約6か月半)、時短勤務での復職までには平均80日(約2か月半)を要したとのことです。私は、研究の方法から考えて、この結果は十分に信頼できると思います。この結果を受けて、遠藤氏は、退職率を下げ復職率を上げるために、十分な病休期間の設定と短時間勤務制度の導入が重要と述べています。現実は、多くの中小企業は、病休期間は短く、大企業でも時短勤務ができるところは少ないと思います。
復職に際して大事なこと
【がん相談コラム2023.02.01『がんの治療と仕事の両立は、こころの安定をもたらす』】でも述べましたが、治療と仕事の両立において大事なことは、働きたいという強い意思と上司・同僚・部下・取引先などに対するコミュニケーションの工夫です。それに加えて、ご本人・人事労務担当者・管理職(ご本人の上司)・産業医などの産業保健スタッフ・主治医の密な連携が大事です。さらにもう一つ、主治医は、日常生活が普通にできていれば、復職可能の診断書を書いてくれることが多いですが、会社は、就労が持続的に可能か、職場が受け入れ可能か、ということを判断基準にしています。
一つひとつのことに集中して、丁寧に、確実に
がんの患者さんが、治療しながら働き続けていくことは、本当にたいへんなことと思います。治療を受けられているなか、辛い思いをされているなか、厳しいことと思いますが、そのような中にあっても、焦ることなく、一つひとつのことに集中して、丁寧に、確実に、こなしていくことが、新しい道を切りひらいていくことに繋がると考えます。
遠藤源樹:企業ができるがん治療と就労の両立支援実務ガイド、日本法令、2017年
院長 | 吉田勝也 |
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標榜科 | がん心療内科 |
資格 | 日本緩和医療学会 緩和医療認定医 厚生労働省 精神保健指定医 日本医師会認定 産業医 |
住所 | 神奈川県藤沢市南藤沢17-14 ユニバーサル南藤沢タワー403 |
申込用 メール アドレス |
gan-soudan@kzc.biglobe.ne.jp
電話番号は載せておりません 未掲載の理由はこちら |
連携医療機関 | 湘南藤沢徳洲会病院 藤沢市民病院 |
金曜日 | 13:00〜17:00(各50分〜4枠) |
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土曜日 | 10:00〜15:00(各50分〜4枠) |
金曜日と土曜日が祝日と重なる場合は休診
1回50分という十分な時間をお取りして、心理療法的枠組みの中で、じっくりと相談して頂ける体制を整えています。
その体制を維持するために、すべて自費診療とさせて頂いています。健康保険は使えませんのでご留意ください。