せん妄-がん終末期の精神的混乱
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せん妄-がん終末期の精神的混乱2023.10.01
皆さん、せん妄をご存じですか? がんの終末期の患者さんは、せん妄により、精神的に混乱することが多いです。ご家族は、その混乱を見て、辛い思いになってしまいます。今回は、藤沢市にあるかつや心療内科クリニックから、『せん妄-がん終末期の精神的混乱』と題して、コラムをお届けします。
せん妄について
脱水、感染、貧血、薬剤などにより、身体に負担がかかると、脳の機能が全般的に低下します。せん妄は、そのことにより生じるのです。がんの患者さんの場合、病状が進み終末期になりますと、臓器不全など身体の負担が大きくなり、せん妄が生じやすくなります。せん妄の症状は、意識がぼんやりする、会話の辻褄が合わない、点滴などのチューブ類を抜いてしまう、怒りっぽくなる、興奮する、暴力を振るう、あり得ないことを言う、夜眠らないといったことが挙げられます。
緩和ケアレジデントマニュアル(医学書院)によると、せん妄の出現頻度は、終末期で余命が1か月程度の場合には30~50%、余命数日から数時間では80%以上と言われています。
せん妄は、身体的要因に基づいて生じる意識障害
ここで大事なことをお話します。ご家族が、患者さんの精神的混乱を見て、認知症になってしまった、精神病になってしまった、と大きなショックを受けてしまうことがあります。せん妄の本質は、身体的要因に基づく意識障害で、認知症や精神病ではありません。「気持ちの持ちよう」や「こころの問題」ではないのです。
せん妄の原因
高齢者や認知症の患者さん、お酒をたくさん飲まれる方などは、せん妄になりやすいです。直接的な原因になるものは、上述しましたように、脱水や感染、薬剤などです。最も頻度が高い原因は薬剤です。特に気をつけなければならない薬剤は、ある種の精神安定剤や睡眠薬、医療用麻薬(がん相談コラム2023.07.01号参照)、ステロイドなどですが、これ以外にも多くの薬剤によりせん妄が生じる可能性があります。
せん妄の治療
治療の原則は、上述したような直接的な原因を探し、取り除くことです。例えば、原因になっている薬剤を中止することが挙げられます。原因を除去すると、今までの激しい症状がウソのようによくなることがしばしばあります。しかし、死が迫ったがんの患者さんの場合、身体に負担をかける要因が多く、複雑に絡み合っていますので、せん妄の治療は難しく、残念ながら症状が取れないことが多いです。
せん妄は、最期のお別れを妨げる
ある日の緩和ケア病棟、ある奥様が私に「あの人(夫)は、いつも穏やかな人だったのに、こんなに興奮して、私を殴ろうとしたんです」と言われました。この奥様の旦那さんは、がんの終末期で、余命は日の単位と考えられていました。この患者さんの興奮や暴力は、せん妄によるものだったのです。昔からいつも穏やかだった旦那さんが、興奮して暴れている様子を見た奥様は、大きなショックを受けられました。優しい旦那さんのイメージが崩れ去ってしまったのです。このように、せん妄は、患者さんとの最期のお別れを妨げてしまうことがあります。
因みに、私はこの奥様に「せん妄は、意識障害であって認知症や精神病ではないです。多くの人が通る道ですよ」と説明したところ、安堵の表情を浮かべられました。
患者さんの意識がはっきりしているうちに、大切なことを伝える
死が近づき、だんだんと身体の機能が失われていき、そのことが脳の負担となり、せん妄が生じてしまう、身体もこころも壊れていくように見えてしまう、ご家族にとっては辛いことだろうと思います。
せん妄になると、意識がぼんやりとして、きちんとした会話ができなくなります。最期の時は、お別れの言葉をしっかりと言いたいと思っていても、会話ができないままのお別れになるかもしれません。患者さんの意識がはっきりしているうちに、どうしても伝えたい大事なことをお話しておくことをおすすめします。
まとめ:せん妄-がん終末期の精神的混乱|藤沢駅徒歩5分 かつや心療内科クリニック(医師によるがん相談)
いかがでしたか? 以下は、今回のポイントです。このことだけでも記憶に留めて頂けると、いつか役立つと思います。
・せん妄は意識障害であり、認知症や精神病ではなく、身体疾患。多くの人が通る道
・患者さんの意識がはっきりしているうちに、大切なことを話し合う
療養中には、何でこんなことが、と驚いたり、困ったりすることが多々あると思います。医師だからこそ、お答えできることもあると思います。療養中の疑問や困りごとのご相談をお待ちしています。患者さんご本人だけではなく、ご家族も相談して頂けます。
院長 | 吉田勝也 |
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標榜科 | がん心療内科 |
資格 | 日本緩和医療学会 緩和医療認定医 厚生労働省 精神保健指定医 日本医師会認定 産業医 |
住所 | 神奈川県藤沢市南藤沢17-14 ユニバーサル南藤沢タワー403 |
申込用 メール アドレス |
gan-soudan@kzc.biglobe.ne.jp
電話番号は載せておりません 未掲載の理由はこちら |
連携医療機関 | 湘南藤沢徳洲会病院 藤沢市民病院 |
金曜日 | 13:00〜17:00(各50分〜4枠) |
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土曜日 | 10:00〜15:00(各50分〜4枠) |
金曜日と土曜日が祝日と重なる場合は休診
1回50分という十分な時間をお取りして、心理療法的枠組みの中で、じっくりと相談して頂ける体制を整えています。
その体制を維持するために、すべて自費診療とさせて頂いています。健康保険は使えませんのでご留意ください。